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Module 03 · Sculpting 🐾 青猫と練習

スカルプト

AIが吐いた粗いメッシュを整え、形を直し、シルエットを決める。「ただのメッシュの塊」を「意図を持ったキャラ」に変える工程だ。ここが産線で最初の、AIが手伝えない手仕事——この講座を学ぶ価値があるかどうかは、このステップで見えてくる。

所要時間2〜4 時間
難易度🐾 青猫と練習
ツールBlender 4.5 LTS
成果物整えたハイモデル
/ 01 · このステップで何をするか

「メッシュの塊」から「意図を持ったキャラ」へ

モジュール02からの続き。シルエットは合っているが表面がザラつき、トポロジーが荒れたベースメッシュを、いよいよ自分の手で本物のキャラへと彫り上げる。

AI生成メッシュには三つの持病がある——表面のデコボコ、あいまいな解剖、部分的な癒着。スカルプトはこれらを一つずつ潰していく——大きな傷を直し、シルエットを整え、解剖を強調し、パーツ分けまで準備する。

なぜこの工程は人がやらねばならないのか?「見た目が良いかどうか」は計算ではなく判断だからだ。AIには、あなたのキャラの肩をもっと広く、あごをもっと硬く、マントをもっとなびかせるべきだ、とは分からない——こうした美的判断は、あなたにしか下せない。

だからこそ🐾練習マークが付いている。技術は難しくない。難しいのは手の感覚と目——鍛えるしかない。青猫が流れと判断基準は渡す。あとは腰を据えて磨くだけだ。

/ 02 · スカルプト前の必須準備

まずリトポし直す。さもないと彫れない

AIメッシュのトポロジーはそのままでは彫れない——面の分布が極端にムラで、引っ張ればすぐ破れる。手を付ける前に、まずこれをやる——

準備 A
ボクセル再構築 Voxel Remesh 必須

ぐちゃぐちゃのメッシュを、均一に分布した彫れる新メッシュへ再計算する。スカルプトモードに入ったら——

  • 右側のRemeshパネル → Voxel Size を設定(4.5はデフォルトで相対モード)。またはビュー内で Ctrl R を押し、インタラクティブにボクセルサイズをドラッグ。
  • ボクセルが小さいほどディテールが増え、面も増える。まず大きめのボクセルできれいなベースを作り、ディテールが要る段になってから小さくして再構築。
  • 再構築すると元のUVとシャープエッジは消える——問題ない。UVはモジュール05でやり直す。
💡段階的に再構築:大ボクセルで形を決める → 中ボクセルで構造を足す → 小ボクセルでディテールを詰める。いきなり極小ボクセルにすると、マシンは固まるし、細かく彫るどころではない。
準備 B
ブラシの場所を知る(4.3以降で変わった)

Blender 4.3から、ブラシは左のツールバーではなく、ビュー下部の Asset Shelf に集約された——

  • 下部のAsset Shelfから直接クリック、または Shift Space でポップアップさせ、名前を打って検索。
  • ブラシカーソルの色には意味がある:黄=移動・変形系、赤=スムーズ・平坦化系、その他=盛り上げ造形系。
準備 C
対称をオン + 参考を配置
  • 上部ヘッダーでX軸対称(Symmetry)をオン。左右を同時に彫れて、手間が半分になる。
  • キャラの非対称な部分(片側だけの武器など)は一時的に対称を切って単独で彫るか、最後にSymmetrizeで片側をミラーする。
  • モジュール01の参考画像を背景画像として前面・側面に配置し、常にシルエットを見比べる。
/ 03 · ブラシ武器庫

10本のブラシで、作業の90%をカバー

Grab · 比率直しの神器

頂点をつかんでマウスに追従させる。大きな形の調整、比率の変更に一番使う——肩幅、頭のサイズ、四肢の長さ、すべてこれ頼み。

Elastic Deform · 柔らかい大改造

リキファイのように、広範囲を柔らかく変形させても面が破れない。胴体を丸ごと直す、手足を伸ばす、はGrabより滑らか。

Snake Hook · 形を引き出す

面を引き出して尖り・角・触手にする。ツノ、しっぽ、布の先端を引っ張る。

Clay Strips · ボリューム盛りの主力

四角い筆先で力強く、素早くボリュームと筋肉の塊を盛れる。スカルプト序盤の第一の主力。ザラついても構わない、後で磨く。

Clay · 穏やかな盛り

Clay Stripsのマイルド版。ボリュームを作りつつ軽くスムーズもかかり、なじみが自然。

Draw · 汎用の足し引き

最も基本、表面に沿って外/内へ押す(Ctrlで逆方向)。小さな出っ張りを足す、少し肉を盛る。

Crease · 境目を刻む

細く深い溝を押し込む。筋肉の境目、布のシワ、装備の継ぎ目を刻む。Crease Sharpはさらに強い。

Inflate · ボリュームを膨らます

法線に沿って全体を膨らませる/へこませる。部分をふっくらさせる、へこんだ所を直す。

Smooth · S / Shift押しっぱ

凹凸を均す、一番よく使う。注意:ボリュームが縮む。やり過ぎて形を消さないこと。

Scrape / Flatten · ハードサーフェス

面を削って硬い平面にする。Scrapeはさらに鋭い境界も削り出せる。鎧・刀剣・メカに必須。

/ 04 · 暗記必須ショートカット

手をキーから離さず、効率倍増

スカルプトモード · 高頻度ショートカット

F — ブラシサイズ調整(ドラッグ後クリックで確定)

Shift + F — ブラシ強度調整

S / Shift押しっぱ — 一時的にSmoothへ切替

Ctrl(スカルプト中に押しっぱ) — 逆方向(凸→凹、足す→引く)

Ctrl + R — インタラクティブ Voxel Remesh

M — マスクブラシ(Mask)· Ctrl+I で反転 · Alt+M でクリア

Shift + Space — ブラシ選択のポップアップ(名前を直接打てる)

Ctrl + 中ボタンドラッグ — 非破壊で一時的にブラシ半径のパースを変える

/ 05 · 工程を一つずつ

大形 → 構造 → ディテール、常にこの順

3.1
大きな傷を直す

まず「致命傷」を潰し、美しさを語るのはその後。AIメッシュにありがちな三つの傷——

  • 癒着(脇の下、股、指):Maskで片方を囲む → Ctrl I で反選またはHideし、分けてから彫る。ひどい場合は再構築後にGrabで引き剥がす。
  • 穴:Voxel Remeshでたいてい自動で水密に塞がる。塞がらない所はDraw/Fillで面を盛って覆う。
  • 変な出っ張り/幻覚ディテール:Smoothで消すか、Maskで周囲を守ってFlatten。
3.2
シルエットを決める 最重要

シルエットはキャラの第一印象、表面のディテールより十倍大事。この工程は移動系ブラシだけで大形を整える——

  • Grab / Elastic Deform で比率を直す:頭身、肩幅、四肢の長さ、ポーズのテンション。
  • 視点を回し続ける——前面が合っても側面が合っているとは限らない。前 / 側 / 45° すべてチェック。
  • モジュール01の参考シルエットと照らし、輪郭を「一目で誰か分かる」ところまで押し込む。
🔬ビューを単色Matcapにして、引いて黒いシルエットで見る。キャラと分からない、輪郭があいまい → Grabで押し続ける。ディテールを急がない。
3.3
解剖と構造を整える

大形が決まったら、一次形体(大きな塊)→ 二次形体(次の階層の構造)を作り始める——

  • Clay Stripsで主要なボリュームを盛る:胸郭、骨盤、四肢の筋群、顔の大きな塊。
  • Creaseで境目を刻む:筋肉と筋肉の間、顔のパーツの間、装備と身体の間。
  • Smoothは各ラウンドの後になじみを整える。ただし控えめに、盛ったばかりの形を潰さない。
  • 常に大から小へ:すべての大きな塊が合ってから二次へ。二次がすべて合ってから、初めてディテールに触れる。
3.4
ハードサーフェス vs オーガニック、分けて処理
  • ハードサーフェス(鎧、刀剣、メカ):Scrape / Flattenで面を削り、Crease / Trimツールで硬いエッジを切る。狙いはきれいな平面 + 鋭い境界。
  • オーガニック(皮膚、筋肉、布):Clay / Inflate / Smooth を主に、柔らかいボリュームと滑らかななじみを追う。
  • 布のシワ:Creaseで溝を押す + Snake Hookで尖りを引く + Smoothで締める。
3.5
ポーズを正す

この工程からリトポへ渡すのは、きれいなAポーズが理想(四肢を身体から離し、リトポとその後のリギングをしやすくする)。

  • ポーズが歪んでいる:Poseブラシ(ボーン連動あり)またはElastic Deformで手足をAポーズへ戻す。
  • この工程では最終的なアクションポーズは付けない——アクションはリギング(モジュール08)の後に取っておく。今はニュートラル・対称・リトポしやすいことだけを狙う。
3.6
パーツ分けの準備

この後の組み立てと個別処理のために準備する——

  • 個別に扱えるパーツ(ヘルメット、武器、マント):Maskで囲む → Mask Extractで独立オブジェクトに分離、またはLoose Partsで分割。
  • 各パーツに分かりやすい名前を:body / armor / weapon / hair…
  • ハイモデル一式を 03_sculpt フォルダに整理・保管。
/ 06 · 肝心の規律

三つの鉄則、初心者とベテランの分かれ目

① 形体を階層で、大から小へ。一次形(大きなボリューム)→ 二次形(次の階層の構造)→ 三次形(皮膚/細かいシワ)。大形がまだ合っていないのにディテールを詰めるな——それは手戻りの王だ。

② 表面に惚れるな、シルエットが王。引いて黒いシルエットで見てキャラと分からなければ、毛穴のディテールをどれだけ足しても無駄。

③ これは最終トポロジーではない、配線にこだわるな。スカルプトは形だけ担当。トポロジーが荒れても構わない——モジュール04のリトポが丸ごとやり直す。ここで配線を詰める=ムダ骨だ。

/ 07 · よくある事故

半分彫ってから気づくと手遅れな落とし穴

再構築せずに無理やり彫る → メッシュは引けばすぐ破れ、彫るほど汚くなる。
いきなりディテールを詰める → 大形が歪んでいて、ディテールを全部やり直す羽目に。
Smoothのかけ過ぎ → ボリュームが消え、キャラが溶けた石けんになる。
前面しか見ない → 側面を回した瞬間、平ら・歪み・出っ張りが全部バレる。
ボクセルをいきなり極小に → マシンが固まり、ディテールを落とす所もない。
スカルプト段階で配線にこだわる → どうせモジュール04でリトポするので、完全にムダ。
非対称ディテールで対称を切り忘れる → 片側だけの武器・傷跡が二つにミラーされる。
/ 08 · 本節の成果物

これに全部チェックが付いて、初めて合格

シルエットが明瞭、一目で分かるハイモデル前 / 側 / 45° すべて成立
大きな傷を除去済み癒着なし / 穴なし / 幻覚の出っ張りなし
解剖構造が妥当、形体の階層が明確一次形 → 二次形まで到達
きれいなAポーズ四肢を身体から離し、リトポの配線がしやすい
パーツを分離・命名、一式を整理保管body / armor / weapon… → 03_sculpt
/ 09 · 次のステップへ進む前のセルフチェック

🐾 三問、すべて通れば通過

  1. 引いて黒いシルエットで見て、あなたのキャラだと分かるか?
  2. 一周回して、どの角度の形も成立しているか(前面だけ良いのはダメ)?
  3. ポーズはきれいなAポーズで四肢が分離し、次のステップの配線がしやすいか?

▸ 三つとも通過 → モジュール04:リトポロジーと最適化へ(🐾練習、経験が最も要る区間)。